キノコの自省録

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ディベートは人を屁理屈で言い負かす弁論術ではありません

ディベートが割と誤解されている風潮がありますので、ディベート本の紹介を。

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ビジネス・ディベート (日経文庫) | 茂木 秀昭 |本 | 通販 | Amazon

どちらも素晴らしい本です。非常に読みやすくもあるので、ぜひ読んで欲しいと思います。

ディベートって何?

ディベートは、決められた論題に対して、肯定派と否定派とにわかれ、それぞれがルールに従って主張を行う競技です。 そう、競技なんです。ルールがあります。審査員もいます。

肯定派と否定派が意見を述べる時間が決まっており、大体以下のような順序で行われます。

  • 肯定側立論
  • 質疑
  • 否定側立論
  • 質疑
  • 否定側第一反駁
  • 肯定側第一反駁
  • 否定側第二反駁
  • 肯定側第二反駁
  • 否定側結論
  • 肯定側結論

立論というのは、「私はこう思いますよ」という主張を、なぜそう思うのかという理由とともに説明する時間です。 反駁は、相手の主張に対して、いやいや違いますよというリアクションでの反撃を行う時間です。

論題は、必ず賛否が明確に分かれるように設定されます。例えば、 「死刑制度は廃止すべきである」 「日本は移民を受け入れるべきである」 「当社は英語を公用語とすべきである」 といった具合です。

相手を言い負かすのが目的なんですか?

Noです。肯定派も否定派も、相手の意見を聞いて、立場を変えるようなことをしません。ディベートは、どちらの言い分がより説得力があるかを、審査員という第3者視点で判断し、優劣を競うゲームです。最終的にどっちが良かったかジャッジされるということです。

また、論述に対する意見を述べるのであって、人格攻撃や、論題と無関係なことを述べてはいけません。そして、肯定派を取るか否定派を取るかは、大抵くじで決まります。その人の信条と同じか違うかはあまり関係ありません。

ゲームスキルってことになるけど実践で使えるわけ?

冒頭で紹介した本でも力説されていますが、考え方の教育に非常に適していると思います。その効果は、ディベートはルールのあるゲームだからこそでしょう。

理由1. 審査員が判断する

審査員は、述べられた意見に対して、どちらの方が説得力があったかを審査します。審査員による評価が入ることで、自分の意見の組み立てが適切だったかどうかの振り返りの機会が得られます。

例えば、社内公用語の英語化について、否定派が「英語だとコミュニケーションロスが増えるから反対です」とだけ主張をした場合、否定派に賛同できるでしょうか?

Noでしょう。これだけだと、あっそう、で終わってしまいます。その主張の理由付けが要ります。例えば、どれくらいのコミュニケーションロスが発生するのか?それは他でリカバリできないほど深刻だと言えるのか?英語の公用語化のメリットを上回るほどのものなのか?その問題が業績にどれくらいのインパクトを与えるのか?などの観点から説明を加える必要があります。でないと、ただのボヤキです。

ここで役に立つのが演繹法帰納法などの垂直思考になります。垂直思考が出来ていないと、論理の接続がおかしいため、ツッコミが入ってしまいます。ここの辺りの考え方は、紹介した本に丁寧に書かれています。

また、審査員がいることで、先ほど書いた人格攻撃のような、無意味な論述は排除されます。これも大きなメリットです。

理由2. 論述の順番と時間が決まっている

時間が決まっているので、声のでかい一人が延々としゃべり続けることはできません。また、論旨不明のままダラダラしゃべってしまうと、すぐ時間切れになってしまいます。発言する内容を精査し、取捨選択する必要があります。時間設定にも拠ると思いますが、立論で主張できるポイントは、大体2つくらいです。

この主張ポイントはただ増やせばいいというものではなく、ポイントが増えた分、どうしてもそれぞれに対する「なぜそう思ったのか」を述べる時間が短くなります。主張ポイントの優先順位付けと、どのくらい述べるかの戦略を練る必要があるということです。

日常見られるような長ったらしい会議も、座長はこんな感じの戦略をあらかじめ練って欲しいと常々思っています・・・。

理由3. 相手がいる

これは割とディベートならではの環境だと思いますが、自分たちと真逆のポジションを取った相手がいます。相手の立論や質疑、反駁をよく聞いて、その主張を理解する必要があります。相手の主張に穴がないか、相手が何を狙ってこちらの攻撃をしているのかなどを判断し、自分たちの戦略をその場で練り直す必要がでてきます。いわゆるクリティカルシンキングです。

立論で終わらず、意見の応酬があるのがミソですね。相手がどこからパンチを繰り出してくるのか、ある程度予測しなければならず、不測の事態にも対処しなければならないということです。

理由4. しゃべる

当たり前ですが、実際にしゃべります。喋り方も、やはり説得力に直結します。プレゼンスキルは誰しも重要だと思っていますが、そのトレーニングにもなります。

下の動画はフジテレビでやっていたディベートの番組で、現役高校教師チーム vs 落語家チームの対決です。実は、この現役高校教師チームの男性教師が、冒頭紹介した本の著者です。本でもチラッとこの時の紹介がありますが、落語家チームの話し方の上手さに舌を巻いていました。

www.youtube.com

それにしてもフジテレビがこんな本格的なディベート番組をやっていたことに驚きました。本を読むまで知りませんでした。

最後に

以上、本に書いてあったことを自分なりの解釈を織り交ぜながらディベートの説明をしてみましたが、自分には実際ディベートの経験がありません。興味はありますけど。

ただ、ディベートに必要な思考法が、現実のビジネスシーンでも非常に親和性が良いと感じています。「考える」というのは言うは易しで、なかなか身につかないスキルです。その「考える」ということがどういうことか、ディベートのトレーニングを行うことで、身につくんじゃないかと思います。