約束の言葉(Commitment word) - Clean CoderとElastic Leadership
(PM関係と本の紹介のエントリです)
後輩(ほぼ新入社員)に、モジュールのある挙動について、どういう仕様にする予定ですか?とチケットで尋ねたところ、
今後はConfig設定で変えられるようにしたいと思っている。
という、なんだか論文の末尾に書く「今後の課題」のような返事が返ってきました。これはいかんです。理由は下記。
- やるのかやらないのかわからない
- スケジュールを意識していなさそう
- 自信がなさそう
そしてこの返事を見た時、エラスティックリーダーシップという本に書かれていた、コミットメント言語のくだりを思い出しました。
6章に書かれています。
約束しない言葉
エラスティックリーダーシップでは、言質を与えない言い方、要するに悪い言い方として、以下の例を挙げています。
・「今週中には終えたいです」
・「打ち合わせを設けましょう」
・「これらの5つのバグをできるだけ早く修正します」
・「それを処理しないといけませんね」
・「私は減量する必要があります」
・「今日中にはやれると思います」
・「できるだけ早くやろうと思います」
p.67より抜粋
やるのかやらないのか判然としない上に、どこか他人事です。責任を回避したい気持ちが表れています。
実はこの言い方、下記エントリーで書いた炎上マネージャーが良く使います。よく使いますというか、こんな言い方しかしないため、いろんな人から「あの他人事感は何なの?」と陰口を叩かれています。
優秀なプレーヤーがなぜ無能なマネージャーになることがあるのか - キノコの自省録
約束する言葉
そうではなく、ちゃんと言質を与える言い方として、以下の例を挙げています。
・「今週中までに終わらせます」
・「今日、打ち合わせの招待を送ります」
・「今週末までにこれら5つのバグを修正します」
・「火曜までにそれを処理します」
・「今月末までに1kg減量します」
・「今日中にやります」
・「18:00までに完了します」
p.68より抜粋
いつまでにやるのか、という期日が明確で、「やる」という宣言を出しています。 この「やる」という宣言が個人的には重要だと思っていて、リーダーがやるんだかやらないんだかわからない態度を取り続けていると、誰もGoできなくなります。
ブラック宣言?
エラスティックリーダーシップでは、このコミットメント言語に関して10ページ割いており、かなりの気合を感じます。 ただ、書き方の問題なのか、言質を与える発言を常にしなければいけないような空気が出ていて、どこかブラックな香りがします。 そのせいか、ネット上で検索すると、 出来もしないオーダーを「出来ます!」と言えということか?という趣旨で、批判している人もちょいちょい見られます。
私個人的には、コミットメントしなければいけない場面で責任逃れをする人間はプロとして最悪だと思っているので、プロジェクト推進の上では必須だと思っています。
元々の出典
そもそもこのコミットメント言語、どこからきた言葉なのか気になったので調べたところ、元々の出典は、Robert C. Martin (通称ボブおじさん)のようです。本ではClean Coderで確認できます。
この本も買って読みました。非常に読みやすくて、読み物としても単純に面白いです。おすすめ。
「約束の言葉」という表現は第3章『「イエス」と言う』で出てきますが、前章、前々章から話が繋がっており、なぜイエスと言う必要があるのかが素直に受け入れられます。 ちなみに第1章は『プロ意識』、第2章は『「ノー」と言う』です。
ざっくり説明すると、プロとして責任をもってノーと言え、プロとして責任をもってイエスと言え、ということです。この「ノー」と言うがエラスティックリーダーシップで言及がないため、前述のような批判が出たものと思います。
エラスティックリーダーシップを読んで釈然としなかった場合、こちらを読んでみると良いでしょう。
おわりに
どちらの本もなかなか読み応えがあります。責任逃れ的発言をする人に悩まされている、みな顔を見合ってプロジェクトが進まない、出来もしないオーダーをムキになって受けて後悔した、などの経験があれば、読んでみると一興です。